FEATURE / 特集 PEOPLE VOL.04

vol4

『商品を通してコミュニケーションしていきたい。』石澤 彰一 x 黒崎 麻衣

石澤 彰一 x 黒崎 麻衣

3つの顔と2つのことから

黒崎麻衣(以下、K):

こんにちは。お先に、石澤さんの「普段の顔」からお話を聞かせてもらえますか?

石澤彰一(以下、I):

こんにちは。僕は「押忍!手芸部」としての僕と、「ウルトラタマ」のデザイナーとしての肩書き、お茶を立てる人としての顔があるんです。また、それを総合したようなアーティストとしての顔もあるというか。

K:

アーティスト的な活動って、具体的にどういう活動になるのですか?

I:

商品でないものの製作、ですね。例えばCMの衣装とか。

石澤 彰一 x 黒崎 麻衣

K:

石澤さんはもともと、服飾デザイナーとして仕事をされ始めたのですよね。

I:

そうです。今は布モノはほぼ何でも作りますね。そこから派生してグラフィックデザインなどもしますけれど。今までは、さっき言ったように3つの別々の顔というかスタンスがあると思っていたけれど、最近、根底にあるものは全部一緒だなーって思います。クリエイションと言うことに対して境界線がなくなっているというのかな。お茶もモノづくりも全く一緒だなと言うか。

K:

石澤さんがお茶をされていることで、つくるものに繋がっているな、と思う瞬間はありますか?

I:

ありますよ。茶道の世界って、厳しいイメージがあるのですけど、意外と自由。みんなが思っているほど狭い枠ではないんです。手芸部でモノをつくっているよりも、広い世界があると思うんです。そして知れば知るほど毎年違うイメージになる。

K:

違うイメージ・・・。

I:

でもね、知れば知るほど見地や経験がひろくなってできるモノづくりもあれば、ワシ、思うのだけれど、クリエイションってね、3?4歳くらいがピークなんじゃないかなって。というのは、手芸部でね、最近小学校に入った男の子がいるんだけど、学校に入ってから部活の調子があんまり良くないんだよね。

K:

部活の調子が良くない、ってどういうことですか?

I:

創造性が最近ちょっと落ちてきたと言うか。だから、「おまえ最近もっと頑張れよな」って言っています。モノづくりには、自由な創造性から生まれるものと、経験から生み出される何かでできるものがあるんじゃないかな。 帽子づくりは分業でできたりするでしょう。そういう時、自分じゃない誰かが全く違う発送で加えたアイデアを目の当たりにしたりして、面白い時はない?

K:

あります!そういう時は、無理に自分のエゴを通さずに、そのまま生かしてみることが多いですけれど。自分と違う発想って、想像できないだけに、面白い。

I:

前にね、インドの刺繍職人に自分がデザインした刺繍を頼んだことがあって、それのデザイン図が細かいって言われたから、拡大コピーして送ったの。そうしたら拡大コピー図通りに刺繍があがってきて、糸なんか毛糸みたいに太かったんだけど(笑)、それがすっごくかわいくて、結局そのまま使っちゃったよね。それも自分ひとりじゃできない、意外性の産物というか。

モノづくりの方向性

K:

「カオリノモリ」で協業された時、帽子作りについてはどう思われましたか?

I:

帽子は、昔は良くかぶっていたのですが、作るのは難しいと思いますね。ミリ単位の仕事になっちゃうというか。1ミリ変わったら全体的にだいぶ変わって、かぶれないものになってしまいますよね。地道な作業だから難しいなという印象はあるけれど。

K:

それは、普段手芸部などでざっくりした感じのものをつくっているからというのはありますか?

I:

そうですね、手芸部は1センチくらいのズレなどは全く気にしないけれどね。でももともと、ウルトラタマでのデザイナーとしての仕事はミリ単位で計算しつくす内容も多いから、面倒だなあと思いながらの流れの中で「押忍!手芸部」ができたと言うのもあります。 それから、手芸部は一見無駄になったり余ってしまった素材を使っていることが多いのですが、そういう素材で作るものって、生産ラインにのりづらいのですよね。ひるがえって、だから手芸部でそういうことをやりたいというのもある。

K:

この商品の名前はなんと言うのですか?

I:

透けてるベアーだから「スケベアー」といいます。

K:

スケベアー……。これはどういうときに生まれたアイデアですか?

I:

一番最初にもとになったのが、使用済み乾電池を見て、それを入れる袋を作ろうとして、透けているものが面白かったから、透けてる素材でペンギンの形をした袋をつくったんです。今は17キログラムくらいにもなったけれど。綿や使用済みの布を詰めて作って、それをぬいぐるみにしたら作り終わった後、何もごみが出ないね、ということで。 今、ちょっと考えていることがあって、人や家庭によって出るごみって違うじゃないですか。そのごみをスケベアーみたいなものに入れるとそれぞれの背景が分かって面白いなあと思っているんです。

K:

こういうような作品の使い方も含めて、デザインが浮かぶときって、どんな時ですか?

I:

それはもういろんな時ですね。こうやって話を聞きながら、人の時計をみてヒントをもらったり、ボーっとしている時にふと浮かんだり。でもそういうことをずーっと考えていると、それが具体的なアイデアとしてこぼれてくることも多いけれど。

 

K:

私は考えてる時とそうでない時の差が激しいのですが、石澤さんはモノづくりのとき、何を思って、というか、その先に何を考えてデザインをしてますか?

I:

何か、作ったもので相手とコミュニケーションできたらいいなと思っています。だから今、ウルトラタマで作っているものはコミュニケーションツールを作っていると思っていて、使う人がそれをもとにまた誰かとコミュニケーションできるというか、そういうことができれば、と考えてる。だって、帽子だって、かぶってる人は絶対話しかけられてたいと思ってるはず! その帽子どこで買ったの? とか話しかけられたら嬉しいし、そうやってコミュニケーションツールのようになるのはいいと思うな。

K:

それって、ずっと前から思っていたのですか?

I:

いや、全然(笑)。20歳くらいのときって、自分が1番だと思っていましたよ。だからモノづくりも、自己満足的なものが多かったと言うか、例えば人と違うものを作ろうとか、主役となる着る側のことを考えていないんですよ。自分が気にする評価も、雑誌やアパレルブランド側の評価だったりして、専門的な評価を求め、特殊な評価ばかりを求めていたんですね。 だから今は増して、「やっぱコミュニケーションだよな?」って言ったりしてるんですけど。

K:

私も自分の自己満足だけでモノをつくったりしていますが、その先がたまに見えなくなったりすることもあります。でも最近はお客さんが「自分らしいかぶり方」をしてくれたらいいなと思うようになりましたが。

I:

そう、使ってくれる人が喜んでくれるといいな、と思っていますよ。今は。 昔は、「絶対喜んでくれてる」と思ってたんですよ。でも実際は違っていたような気がするけれど。

アイデアを実現する

K:

ココ最近の野望というか、夢はありますか?

N:

実際に自分の頭の中にある物語を映像で作りたいなと思っています。あと、世界進出。わしの中では、テキトーに見えてもスケジュールが組まれているんです。海外進出もそのうちのひとつかな。

K:

海外での手芸部さんの評判はいかがですか?

N:

モノとしては面白がってもらえますけどね。でも、手芸部は部活が1番だから、何かそれを見たり、体験したりしてもらえる機会があれば1番いいけれど。やっぱり盛り上がるし。以前、韓国で偶然名刺交換した人が、わしが作った名刺ケースを持っていて、「これいいのよね」なんて言ってるんですよ。だから「それつくったの僕ですけど」みたいな。そういうの嬉しいなあ。僕のデザインというか商品を通してコミュニケーションできた感じ。

K:

いいなあ、そういう話。

I:

別な話になるけれど、あの、ミネラルウォーターのコントレックスって、キャップを取ったあとにピンクの輪が残るじゃないですか。あれが「かわいいな」と思って、あの部分を集めているんですよ、今。そして早く何かをつくりたくてたまらない感じ。

K:

さきほど、アーティストっぽい仕事の依頼が多いと伺いましたが、他には肩書きを越えたようなお仕事はされているのですか?

石澤 彰一 x 黒崎 麻衣

I:

最近、ある農薬が、どうしたら売れるかという相談を受けて、パッケージなども考えたりしましたけれど。

K:

農薬!

I:

あと、生湯葉とか生麩のプロモーションも。ぼくとしては新しいシステムやいろんなことをつくるのは好きだから、そういう新しいカタチを作るのは好きですね。自分で物語ができると言うか。だから映像も撮りたいと思うのかもしれない。

K:

面白そう。私は今のところ帽子専門職人ですが、自分で作りたいと思うものはたくさんあります。それに最近考えるようになったことは、ささいなものにも創った人の想いはこめられてるんだな、ということ。帽子作りを始めるまでは、作る側より断然買う側だったので、今は違う見方ができますね。

I:

そうかも。そういう意味でも、発想というか、アイデアは全ての人にあるものだから、活かせると面白いよね。

K:

はい。では最後に、最近注目している作家、クリエイターの方はいらっしゃいますか?

I:

古賀充くんというアーティスト! 何というか…、ぜひチェックしてみて!古賀充くんという造形作家がいてね、彼はね・・・早めに何とかしておかないとな、って思います。
黒崎さんに質問です。帽子のデザイナーになろうと思ったきっかけは何ですか?

K:

洋服の専門学校に行っていて、仕事にするなら人が身につけるものをデザインしたいと思ったことがきっかけです。小物でも、だいぶ人の印象を変えることができると思うのです。顔のすぐ上に来るぶん。今、クリハラで企画生産デザインとして始めたのが2年目です。

I:

大変ですか?

K:

そうですね、内容によって違った苦労があって、ライセンスのデザインだと、決まった枠組みの中での難しさがありますが、オリジナルのブランドデザインではゼロから自分のデザインを行うので、どう自分の宇宙と言うか、世界観を表現しようかと苦労しています。 決まりがないところで決まりを自分で作るのは本当に難しい。

?? お二人が最近注目している素材ってありますか?

I:

わしはね、熱加工。「スケベアー」なんかもそうだけれど、ビニールに縫い目がなく接着されてるじゃない?あれって面白いよね。今までずっとミシンが多かったから。

K:

紐をとめるストッパーかな。顔に見えます(笑)

I:

・・・・・・今バランのことで頭がいっぱいになっちゃったんだけど(笑)。

K:

バラン?

I:

バランってね、あの、お弁当に入っているおかずの味を区切る緑色の葉っぱなんだけど、あれが入っているお弁当の方が、入っていないものよりも断然売れるらしくて。それってすごくない?でも実際、バランって食べるときにはもういらないじゃない。わしら手芸部は、バランみたいになりたいな、って思ってるんです。1番最初にはずされてもいいけれど、いなきゃ困る、みたいな。カタチも何となく北欧っぽいし(笑)。 バランで王冠を作ってかぶせてあげて、キミも「よくみえるように」ってね。
帽子を作るのって、分業だよね?

K:

そうです、いろんな人の手を経てカタチになるのですが、自分の想像を超えて実は良かったりするものもあって、そういうときは本当に面白いですね。

プロフィール

押忍!手芸部部長/石澤 彰一 Shoichi Ishizawa

Shoichi Ishizawa
1985年、文化服装学院 デザイン専攻科卒業。アパレルブランドに入社し、服飾テキスタイル企画でプリントから織り物までテキスタイルの基礎を学ぶ。1989年、フリーランスデザイナーとして渡仏、パリにて日本の企業への企画・デザイン提供を始める。1990年帰国し、フリーランスデザイナーとして、衣装デザイン、アクセサリーやグラスデサインを手掛け、数々のアパレルブランドでデザイナーとして活躍したあと、1998年、有限会社ウルトラ・タマを設立。 ULTRA TAMAデザイナーとしてブランド[SHOICHI ISHIZAWA/ULTRA TAMA] を東京コレクションにて発表する。2003年、「押忍!手芸部」を結成。現在、ファッション+雑貨+インテリアなどのデザイン、プロデュースのほか石澤宗彰として茶道裏千家今日庵 専任講師としても活動中。

クリハラ デザイナー/黒崎 麻衣 Mai Kurosaki

Mai Kurosaki
1986年生まれ。ドレスメーカー学院、デザイナー科卒業後、株式会社栗原入社。 08AWより、カオリノモリ・ライセンスブランドの企画を担当。この仕事を通しての、人との出会いにとても刺激をうけています。人の心を動かせるような、モノづくりが出来るよう日々勉強中です。
押忍!手芸部

押忍!手芸部とは?

2003年結成。石澤彰一部長を含む7人の男前手芸部員を中心に、年齢や性別、人種や国境を越え活動する手芸集団。部長を除いては、手芸がまったく出来ないメンバーが集い、ミシンをマシンと呼び、細かいルールや作業にとらわれず、個人の個性を大切にし た手芸部である。

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『ロボぐるみ』 \10,001 電池で動くおもちゃの犬の本体部分だけ残し、外側をアレンジしたロボット。おもちゃ犬独特のぎこちない動きに、ラフな衣装が妙にマッチ。

『スケベアー』 価格未定 ビニールを熊の形に張り合わせ、中に好きなものを入れられるスケルトンベアー。おかしでも、余った布でも、ごみでもOK。

『まきぐるみ』 価格未定 編み物ができない部長が作り出した、毛糸を巻くだけのぬいぐるみ。芯となる綿にパーツごとのイメージをしながら巻きつけるだけで、ちゃんと手足や胴体の形になる!