
『楽しい時間を長持ちさせる、モノづくり。』平野かおり x 江口宏志

江口宏志(以下E):
もともと、小さい頃から帽子が好きだったんですか?
平野かおり(以下H):
中学生の時に帽子デザイナーって職業を知ってからずっと、帽子デザイナーになろうと思っていたんです。
E:
珍しいね(笑)そんな中学生、なかなかいないよね。
H:
小さい頃からマイナーな物が好きだったんです(笑)だから帽子ブームとかが来る前から、服じゃなくて帽子のデザイナーがいいなって思っていたんです。
?? 江口さんもマイナーな物好きですか?
E:
そんなことは無いんですよ。僕はメジャーに行きたいんですけどマイナー好きって思われてますね(笑)ユトレヒトでセレクトされてる物がマイナーな感じですかね。
H:
マイナーというか、コアなんだと思います。
E:
小さい本が好きって思われることもありますね。でも、小さい本は小さいから好きなんじゃなくて、一つのテーマを表現するのに丁度良い大きさなだけなんですよね。変にごちゃごちゃ余分な物が無いというか、一つのことを言う為に本を作るというか、それが結果として小さい本だったり、軽い本だったりするだけなんですよ。
ホンマタカシさんと作ったこの本は、ホンマさんが飼っていた犬の写真だけってワンテーマなんです。僕は、こういう本が好きなんですよ。
H:
それって、コンセプトがはっきりしているってことですかね?
E:
そうですね、コンセプトがはっきり形として見えている物が好きですね。帽子作りもコンセプトを考えるんですか?
H:
帽子も、コンセプトを持って作らないと伝わらないし、皆もコンセプトがあるものを求めていると思うんですけど、やっぱりそういう帽子を作るのは難しくて、悩むこともあります。
E:
帽子は難しいですよね。本は、表現したい物、面白いものを作れば良いけど帽子の場合は、それにかぶり心地やファッション性だとかって要素が加わるわけでしょ。素材だって色々あるし。あまりに作品っぽい帽子だと、何を着ていいか、わからなくなっちゃうし(笑)
H:
そのバランスも凄く難しいんです。

H:
自分としては、この形が絶妙って思っているんですけど、言葉で伝えるのは難しいですね。ここが良いですってよりは全体の印象しか伝えられないんですよね。だから、改めてコンセプトって大事だなって思うんです。
E:
言葉で伝えるのは難しいですよね。じゃあ、今回のシリーズ全体のコンセプトは?
H:
シーズンテーマは、「スイーツ」なんです。アフタヌーンティーとかお茶会のイメージで、楽しさとか、甘さとか、女子的なかわいらしさをテーマに作りました。
E:
このドットの帽子は、形そのものがスイーツって感じでかわいいですね。
H:
この帽子の形って紳士的でフォーマルなんですけど、ドットにする事で遊び心と楽しさを出して、女性的にしてみたんです。
E:
一つのシーズンで何型くらい作るんですか?
H:
1シーズン100型くらいですね。
E:
100型も作るんですか。それは、色違いとかも含めて?
H:
いや、色違いは1デザインと数えて100型です。
E:
凄いね。本当に帽子が好きじゃなきゃできない仕事ですね。
?? ものづくりで楽しいのは、作っている時ですか、出来上がった時ですか?
E:
僕の場合は、意識的に楽しい時を長持ちさせようと思ってやっています。本を売って終わりとか、本を作って終わりじゃ、もったいないじゃないですか。
実はこの店に置いてある本は、生きている人の作品だけなんです。生きている人なら、本を売るだけじゃなくその人と一緒に何かできる機会があるからなんですよ。一緒に新しい本を作ったり、ギャラリーを使って展示をしたり、パーティーをしたり。
先ほどのホンマタカシさんと作った本も、完成して業者さんに流して終わりじゃもったいないって思って、本を使ったイベントをしたり、本に出てくるホンマさんの犬のTシャツを作ったりしたんです。本は、世に出た時が一番盛り上がるタイミングなんだけど、それだけじゃなく色々な見せ方で、色々なタイミングで、本の面白い所を見せていくってことを考えるが僕の本屋さんなんです。
H:
それって、凄く楽しいですね。
E:
楽しさが長く続くのは良いんですけど、手離れが悪いんですよね(笑)。でも、それも含めて楽しみと捉えてやっていこうかなって思ってます。

?? 平野さんは、お店を見て気になる本はありましたか?
H:
気になる物、いっぱいありました。コラージュが好きなんで、そういったデザインの本が気になりました。イラストだったり写真だったり。
E:
自分でも絵を描かれたりするんですか?
H:
絵は好きで描いてました。あんまり人に言えるほどじゃないですけど。あと、絵本が好きで、図書館によく借りにいくんですよ。ヤノシュの絵本とか好きなんです。
E:
ヤノシュかわいいよね。最高だよね。
H:
いつも偶然出会うんです。なかなか置いている所がなくて。見つけると「あった!」って嬉しくなるんです。 あと最近は、宮沢賢治の「よだかの星」が好きです。ささめやゆきさんがイラストを描いている「よだかの星」があってそれが凄く良いんですよ。 それと、写真家だと森山大道さんが好きです。
E:
渋いね!モノクロの新宿とか、あんな感じが好きなんだ!
H:
江口さんのオススメの本を教えてください。
E:
こんな本はどうでしょう。「(un)FASHION 」。Tibor KalmanとMaria Kalmanて二人が作った本で、民族衣装とか軍服とか、ファッションじゃなく必要性とか機能性で着ているけど結果としてファッショナブルに見えるって服を集めた写真集。
H:
おもしろいですね。ファッションのアイデアもこうゆう所から生まれてたりしますよね。
E:
これは最近ユトレヒトで作った「100things in My Room」という本です。アーティストの伴美里さんが、自分の部屋にある100個の物を描いた本なんです。くだらない物から、素敵な物、買った物もあれば、貰った物もある。100個良い物選んできましたって本はあるけど、これは本当に部屋にあった何気ない物で、なんでそれがあるかって理由や、ちょっとしたエピソードも書かれてるんです。
H:
自宅公開ですね、これは(笑)。
E:
あとこの本。「あさって歯医者さんに行こう」って詩集なんですけど、すごくいいんですよ。わかりやすくて、明るくて、ポジティブで。今この本の作家、高橋順子さんの展示を店内でやっているんです。
詩に対して挿絵がついている詩画集ってあるんですけど、この展示は逆で絵や写真が最初にあって、それに順子さんが詩を付けているんですよ。ただの絵の説明じゃなくて、詩によって世界観が広がる感じがするんですよね。
言葉からデザインを思い浮かべることはありますか?
H:
今までは、なかったんですけど、その方法は良いなって思いました。コンセプトで悩んでいたのが解決されるかもしれないです。詩のワンフレーズからイメージした帽子ができたらいいですね。
?? お二人は、これから先どんなものを目指していきたいと思っていますか?
E:
メジャーを狙っていきたいですね(笑)。でもそれは、本じゃないだろうって話ですかね(笑)。今の時代、本自体がかなり嗜好品の方に行ってますからね。 でも、本当は本じゃなくても良いと思っているんです。いま準備をしているAOBA ARTというアートイベントでは、本と関係ないことをやっているんですよ。横浜の青葉区で開かれるイベントで、僕がやるのは街の住人から物を集めて開くリサイクルショップなんです。
H:
本当に、本じゃないですね(笑)。
E:
物って作られてからの時間があるじゃないですか、でも一方で人にとっては作られた時間だけじゃなくて、手に入れてからの時間があるんですよ。その、手に入れてからの時間で商品を並べてみようと思ったんです。例えば、60年代に作られたイームズの椅子でも、90年代のブームの時に手に入れた物なら90年代扱いにするんです。
街のイベントなんで、街に住んでいる人達がどういう思考を持って、どういう物を使っていたかが、わかれば面白いなって思ってます。
全然、本屋じゃないんですけど、人が何を考えて何を選んでいるんだろうってことを知ることは本屋と同じ楽しさだと思うんです。また、あんまりメジャーじゃない話ですけどね(笑)。
H:
私は、苦しみながらも楽しんで帽子を創り出していきたいですね。今回色々なインスピレーションをいただけたんで、それを活かしながらもっと新しい物をいっぱい出していきたいです。



